M&A業界における専門用語を徹底解説 | 実際の使用例も掲載

目次

経営戦略に関する用語

オーガニックグロース(Organic growth)
【意味】「M&Aに頼らず、自社のリソースを使った既存事業・新規事業での成長」を指します。
【使用例】今期は30%の売上成長を計画していますが、オーガニックで十分達成できると考えています。

インオーガニックグロース(Inorganic growth)
【意味】オーガニックグロースとは逆に、「M&Aによる成長」を指します。
【使用例】今期は30%の売上成長を計画していますが、主に昨期に買収した子会社の寄与によるインオーガニックでの成長を見込んでいます。

ロールアップ(Roll-Up)
【意味】PEファンドがよく用いる戦略であり、「同業他社の追加的な買収により、規模の経済を活用して企業価値を高める戦略」を指します。
【使用例】あのPEファンドの投資先は、飲食業界でロールアップを進めているので、この案件の買い手として考えられる。

M&A実務全般に関する用語

ストラテジック・バイヤー(Strategic Buyer)
【意味】事業戦略上の買い手という意味合いから、「事業会社の買い手」を指します。
【使用例】本件は、ストラテジック・バイヤーが買い手の本命だと考えています。

フィナンシャル・バイヤー(Financial Buyer)
【意味】金融目線での買い手という意味合いから、「PEファンドの買い手」を指します。
【使用例】本件は、フィナンシャル・バイヤーが買い手の本命だと考えています。

ロングリスト(Long List)
【意味】M&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社が作成する、「想定する買い手候補企業を幅広に記載したリスト」を指します。数百社になる場合もあることからロングリストと呼ばれています。
【使用例】ロングリストは200社となっていて、ここから一社ずつ確認し、シナジーがありそうな会社をショートリスト化していきます。

ショートリスト(Short List)
【意味】M&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社が作成する、「ロングリストをもとに、買い手候補企業を絞り込んだリスト」を指します。ロングリストでは数百社になることもありますが、ショートリストは数十社のリストとなることが通常です。譲渡価格最大化にむけて幅広く打診する場合はロングリストをもとに総当たりで打診し、厳格な情報管理を行う案件ではショートリスト化し、慎重に打診していく事となります。
【使用例】ショートリスト化した上で優先順位を付けており、上位の20社にまず打診していきます。

ネームクリア(Name Clear)
【意味】「買収対象企業の社名やIMを、(ティーザーを送付して初期的な関心を示した)買い手候補企業に開示して問題がないか、売り手に対して確認するプロセス」を指します。なお、情報管理をより入念に行う案件では、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社がロングリストを作成した時点でネームクリアを行い、ティーザーを送付して良い先かどうか売り手が判断するケースもあります。
【使用例】ネームクリアの結果、開示許可が出なかったことからIMは送付出来ない事となりました。

PMI(読み:ピーエムアイ。Post Merger Integration)
【意味】「M&A実施後の、買い手企業と買収対象企業の統合プロセス」を指します。
【使用例】あの子会社については、買収後に主要メンバーが離職してしまいPMIに難航している。

M&Aの書類に関する用語

ティーザー(Teaser)
【意味】買い手候補企業に対して、買収対象企業への初期的な関心を確認するための、「買収対象企業の社名等の個別具体の情報は伏せた形で、大まかな売上規模や業種等を記載した書類」を指した書類を指します。通常、ティーザーを買い手候補企業に送付し、関心があれば機密保持契約を締結するとともに売主に開示許可を取るネームクリアのプロセスを経て、IMを買い手候補企業に送付し、トップ面談を経てLOIの提示を受けるというのが1次プロセスのおおまかな流れとなります。
【使用例】ティーザーを100社に送付し、ネームクリアのプロセスに進んだ会社は50社だった。

IM(読み:アイエム。Information Memorandum)
【意味】「事業内容や組織体制、業績、今後の事業計画、株主構成など、LOIの提出に向けて買い手候補企業が買収検討を出来るように、買収対象企業の詳細情報が記載された資料」を指します。
【使用例】ネームクリアの結果、開示許可が出たことからIMを送付いたします。

意向表明書(Letter of Intent)
【意味】1次プロセスで買い手候補企業が提出する、「法的拘束力を持たせない形で売買代金の目途や想定するスケジュール、その他条件を記した書面」を指します。売り手としては、複数の買い手候補企業からの意向表明書を確認し、価格やスケジュールなど自身の希望に合うものを絞り込み、独占交渉権を付与して2次プロセスに進ませる買い手を選出するための書類となります。なお、英語のLetter of Intentの頭文字をとって、「LOI(読み:エルオーアイ)」と言う場合もあります。
【使用例】この案件では、10社程度から意向表明書の提出を予定しています。

M&Aの契約書に関する用語

機密保持契約書(Non-Disclosure Agreement)
【意味】買収対象企業の社名やIMの開示にあたって、「買い手候補企業とM&A仲介会社又はM&Aアドバイザリー会社との間で締結する、機密情報の遵守や漏洩時の責任を規定した契約書」を指します。なお、機密保持契約書は堅い表現であり、英語のNon-Disclosure Agreementの頭文字をとって、「NDA(読み:エヌディーエー)」と言うことが一般的です。また、秘密保持契約書(Confidentiality Agreement。略してCA(読み:シーエー))と呼び人もいますが、やはりNDAという言い方が一般的です。
【使用例】IMの開示にあたってNDAの締結が必要となりますので、弊社のひな型を後程お送りします。

基本合意書(Memorandum of Understanding)
【意味】1次プロセスのLOI提示を経て、2次プロセスに進む段階で、「選定された買い手・売り手間で締結される合意書」を指します。通常、法的拘束力を持たせない形で売買代金の目途やスケジュールが記されたり、選定された買い手への独占交渉権の付与といった内容が記載されるものとなりますが、基本合意書が締結されないケースも多々あり、締結が必須の契約書という訳ではありません。なお、英語のMemorandum of Understandingの頭文字をとって、「MOU(読み:エムオーユー)」と言う場合もありますが、基本合意書と言うのが一般的です。
【使用例】買い手が上場企業であり、基本合意書を締結する場合は適時開示が必要です。

SPA(読み:エスピーエー。Stock Purchase Agreement又はShare Purchase Agreement)
【意味】DD後に買い手・売り手間で締結される、「株式譲渡契約」を指します。株式譲渡スキームの場合、株式譲渡契約が最終契約となる為、DAと実質的に同義。
【使用例】DDが難航したものの、ようやくSPAの締結に漕ぎつけることが出来た。

DA(読み:ディーエー。Definitive Agreement)
【意味】DD後に買い手・売り手間で締結される、「最終契約」を指します。株式譲渡スキームであれば株式譲渡契約、事業譲渡スキームであれば事業譲渡契約、吸収合併スキームであれば吸収合併契約を指します。
【使用例】DDが難航したものの、ようやくDAの締結に漕ぎつけることが出来た。

表明保証条項(Representations and Warranties)
【意味】DAの中で規定する、売り手が買い手に対して「一定の事項が真実かつ正確であることを表明し、その内容を保証する条項」を指します。なお、英語のRepresentations and Warrantiesを略して、「レプワラ」と言う場合もあります。
【使用例】買い手・売り手が表明保証条項で譲らず、困っている。

M&Aのフィーに関する用語

着手金
【意味】起用したM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社に対する、「案件着手時のフィー」を指します。フィーは成功報酬のみとしている会社も多くありますが、大手を中心として着手金や中間報酬を求める会社も一定数あります。
【使用例】本件では資料作成等の負荷が大きく、着手金を設定させていただきたいと考えています。

リテイナーフィー(Retainer Fee)
【意味】起用したM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社に対する、「月額固定料金のフィー」を指します。リテイナーフィーを求める会社は限定的と考えられます。
【使用例】本件ではM&A実現の確度が低く、成功報酬を頂戴できる可能性が低いことから、リテイナーフィーを設定させていただきたいと考えています。

中間報酬
【意味】起用したM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社に対する、「一定の条件が成就した場合のフィー」を指します。多くの場合、1次プロセスが終了して2次プロセスの開始時点で、中間報酬が支払われます。
【使用例】本件では、基本合意書の締結時点か、基本合意書を締結しない場合はDDの開始時点を以って中間報酬を設定させていただきたいと考えています。

成功報酬
【意味】起用したM&A仲介会社やM&Aアドバイザリー会社に対する、「株式譲渡契約の締結(又はその後のクロージング)が成就した場合のフィー」を指します。
【使用例】成功報酬は、株式譲渡契約が締結されず、株式譲渡が実現しない場合には発生しません。

レーマン方式
【意味】「M&Aの成功報酬の算定に使用する、一般的な計算式」を指します。譲渡価額が高額になればなるほど、報酬が高くなるように計算式が設定されています。
【使用例】成功報酬は、レーマン方式で計算を行います。

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記事の著書

【M&A転職ドットコム運営者のプロフィール】
■ 外資系投資銀行及びブティック系のM&Aコンサル会社にて、M&A・資金調達といった投資銀行業務に従事
■ ベンチャー企業のCFOに就任し、IPO準備を経てIPOを達成。買い手企業側及び売り手企業側の両面で、M&A仲介会社等と密にやり取りを実施

M&Aのアドバイザリー業務に従事するとともに、買い手企業側及び売り手企業側の両面で当事者としてM&Aに関わってきた経験をもとに、M&A業界での転職を検討される方に有益な情報を発信しています

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